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矯正に関する知識

「歯がなかなか生えてこない…」高校生までに矯正を終わらせたい君へ

こんにちは。東京都葛飾区の歯医者 新小岩いろは歯科・矯正歯科、院長の細谷 亜沙美です。矯正治療は、長い時間をかけて歯並びを整えていく治療です。特に、感受性が豊かな中学生の時期は、「早く装置を外したい」「マスクなしで思いっきり笑いたい」という気持ちが、日増しに強くなることと思います。先日、まさに今、矯正治療を頑張っている中学2年生の方から、このような、胸がキュッとなるようなご相談が寄せられました。

「小学6年生から矯正を始めて、高校生になるまでに終わらせたいです。でも先生に聞いたら、奥歯が生えてくるスペースがなく、その歯が生えないと進まないと言われました。バネでスペースを作ってもらっていますが、何ヶ月経っても生えてきません。歯を早く生やす方法はあるのでしょうか?高校生になったら、思いっきり笑える生活を送りたいんです。」

ゴールが見えないトンネルの中にいるような、不安で、もどかしい気持ち。そして、「高校生活」という新しいステージに向けた、キラキラした希望。その両方が、ひしひしと伝わってきます。今回は、この「待っている歯が、なかなか生えてこない」という問題について、なぜそれが起こるのか、そして私たちに何ができるのかを、分かりやすくお話ししていきたいと思います。

目次

  1. なぜ?待っている歯がなかなか生えてこない理由 2.【結論】残念ながら、歯を「早く生やす」魔法はありません
  2. でも、諦めないで!歯が生えるのを「手助けする」方法
  3. 「高校生になるまでに」という目標、間に合う可能性は?
  4. 今、あなたにできる、一番大切なこと
  5. まとめ

1. なぜ?待っている歯がなかなか生えてこない理由

まず、なぜあなたの奥歯が、なかなか顔を出してくれないのか、その理由からご説明しますね。一番大きな原因は、ご自身でも理解されている通り、「歯が生えるためのスペース(場所)が足りない」ことです。

私たちの歯は、顎の骨という限られた土地の中に、決まった順番で生えてきます。後から生えてくる歯ほど、先に生えた歯に場所を取られてしまい、窮屈になりがちです。特に、奥歯(第二大臼歯など)は最後に生えてくることが多いため、スペース不足の影響を最も受けやすい歯の一つです。満員電車で、後から乗ろうとしても、スペースがなくてなかなか中に入れない状況をイメージすると分かりやすいかもしれません。

あなたの担当の先生が「バネを入れる」という処置をしてくださったのは、この満員電車の中で、他の乗客(歯)を少しずつ動かして、あなたが乗るためのスペースを一生懸命作ってくれている、ということです。これは、歯が生えてくるのを促すための、非常に的確で、スタンダードな治療法です。

2.【結論】残念ながら、歯を「早く生やす」魔法はありません

ご質問の核心である「歯を早く生やす方法」について、最初に正直にお伝えしなければなりません。残念ながら、歯そのものが成長して、骨の中から出てくるスピードを、薬や特別な食べ物、マッサージなどで速める「魔法」のような方法は存在しません。

歯が生える(萌出する)というのは、植物の芽が土から顔を出すのと同じように、時間をかけて進む、とても自然な生命現象です。この生物学的なスピードそのものを、私たちがコントロールすることはできないのです。「これを食べたら、明日、歯が生えてきた!」なんてことがあれば嬉しいのですが、現実はそう簡単ではありません。

しかし、がっかりしないでください。「生えるスピード」は速められなくても、「生えるのを邪魔している原因を取り除き、スムーズに出てこられる環境を整えてあげる」ことは可能です。今、あなたと先生が一緒に行っている「バネでスペースを作る」治療こそが、まさにそのための最も重要なステップなのです。

3. でも、諦めないで!歯が生えるのを「手助けする」方法

スペースを作っても、何ヶ月も歯が生えてこない場合、歯が「出てきたいのに、何かにつっかえて出てこられない」状態になっている可能性があります。その場合、私たちは次のような「手助け」をすることがあります。

方法①:歯肉の切開(開窓) 歯は生えてきたいのに、その上の歯茎が分厚かったり硬かったりして、それを突き破れずにいる場合があります。その際は、麻酔をして、歯茎をほんの少しだけ切ってあげることで、歯が出てくるための「出口」を作ってあげることができます。

方法②:外科的開窓牽引(げかてきかいそうけんいん) 歯茎を切って出口を作っても、まだ歯が出てくる気配がない「頑固な」歯に対して行う、少し積極的な方法です。 歯茎を開いて、まだ骨の中に埋まっている歯の頭(歯冠)を直接目で確認します。そして、その歯の表面に、小さなボタンのような矯正装置を接着します。歯茎を元に戻して縫い合わせた後、そのボタンにつけたゴムやワイヤーの力で、歯を正しい位置へと、そっと引っ張り出してあげるのです。

「切開」や「外科」と聞くと、少し怖く感じてしまうかもしれませんね。でも、大丈夫。これは矯正治療では決して珍しくない処置で、多くの患者さんが経験するステップの一つです。もちろん、処置はしっかりと麻酔をして行いますし、痛みも最小限に抑えられます。この「手助け」によって、止まっていた時間が再び動き出し、治療が一気に進むことは非常によくあります。

4. 「高校生になるまでに」という目標、間に合う可能性は?

「高校生になるまでに矯正装置を取りたい」というあなたの目標、素晴らしいと思いますし、私たちもその気持ちを全力で応援したいと思っています。

現状を正直にお話しすると、もしこれから外科的な手助けが必要になった場合、そこから歯を引っ張り出して、さらに全体の歯並びを整えるためには、数ヶ月~1年程度の時間が必要になる可能性があります。中学2年生の今から考えると、高校入学のタイミングに、装置が外れている可能性は十分にあります。

しかし、もし少しだけ時間が延びて、高校生活の初めの数ヶ月、装置がついていたとしても、それは決して無駄な時間ではありません。焦って中途半端な状態で治療を終えてしまうことのほうが、将来的に後悔に繋がってしまいます。目標を持つことは素晴らしいですが、それ以上に大切なのは、「一生涯、自信を持って笑える、健康な歯並び」を確実に手に入れることです。ほんの少しだけ、長い目で見てあげることも大切かもしれません。

5. 今、あなたにできる、一番大切なこと

「早く歯を生やす魔法」はありませんが、治療をスムーズに進めるために、今のあなたにできる、とても大切なことがあります。

  1. 担当の先生と、もう一度よく話すこと:「高校生になるまでに装置を外したい」というあなたの強い気持ちを、改めて先生に伝えてみましょう。そして、「もし、このまま生えてこなかった場合、次にどんな方法がありますか?」と、今後の見通しについて質問してみてください。あなたの気持ちを知ることで、先生も、より具体的な計画を立てやすくなるはずです。
  2. お口の中を清潔に保つこと:歯茎が腫れていたりすると、歯はスムーズに動くことができません。バネなどの複雑な装置の周りも、丁寧に歯磨きをして、常に清潔な状態を保つことが、遠回りのようで、実は治療を順調に進めるための近道になります。

まとめ

矯正治療の道のりは、時に、思い通りに進まないこともあります。今、あなたは、まさにそんな壁に直面し、もどかしく、不安な気持ちでいっぱいだと思います。

歯がなかなか生えてこないのは、あなたのせいではありません。そして、それを解決するための方法は、ちゃんと存在します。あなたの担当の先生は、そのための最善策を、今まさに考えてくれているはずです。

一番大切なのは、一人で悩まず、その不安な気持ちを、正直に先生やご家族に話すこと。そして、未来の自分の、最高の笑顔を信じて、今やるべきことを一つひとつ丁寧に行うことです。あなたの「高校生になったら思いっきり笑いたい」という願いが叶う日を、私も心から応援しています。

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