デンタルローンって何?矯正治療を分割払いする時の注意点を歯科医が徹底解説
こんにちは。東京都葛飾区の歯医者、新小岩いろは歯科・矯正歯科 院長の細谷 亜沙美です。歯列矯正は、美しい歯並びと健康な噛み合わせを手に入れるための、価値ある自己投資です。しかし、その一方で、治療にはまとまった費用が必要となるため、「受けたい気持ちはあるけれど、費用の面でなかなか踏み切れない…」とお悩みの方も少なくありません。特に、矯正治療は自由診療となることが多く、保険適用の治療に比べて高額になりがちです。
そんな時、治療費の負担を軽減するための選択肢の一つとして、近年注目されているのが「デンタルローン」です。カウンセリングの際にも、「分割払いはできますか?」「ローンは組めますか?」といったご質問をよくいただきます。デンタルローンは、一括での支払いが難しい場合に、月々の負担を抑えながら治療を始めることができる、非常に便利なシステムです。しかし、その一方で、「ローン」という言葉に漠然とした不安を感じたり、仕組みや注意点をよく理解しないまま利用してしまったりすると、後で思わぬ負担に繋がる可能性もゼロではありません。今回は、矯正治療などの歯科治療費に利用できるデンタルローンとは一体何なのか、その仕組みからメリット・デメリット、そして利用する際の重要な注意点まで、詳しく解説していきます。
目次
1. そもそも「デンタルローン」とは?基本的な仕組みを理解しよう

まず、「デンタルローン」とは何か、その基本的な仕組みからご説明します。デンタルローンは、その名の通り、歯科治療にかかる費用を支払う目的で利用できる、金融商品(ローン)の一種です。別名「歯科ローン」や「メディカルローン」と呼ばれることもあります。
一般的なローンと同様に、患者様が、信販会社や銀行などの金融機関と直接契約を結び、治療費を立て替えて支払ってもらう形になります。歯科医院が直接お金を貸すわけではありません。流れとしては、以下のようになります。
- 治療計画と見積もりの確定:まず、当院でカウンセリングと精密検査を行い、矯正治療の具体的な計画と、総額の費用(見積もり)を確定します。
- デンタルローンの申し込み:患者様ご自身で、提携している信販会社、またはご自身で探した金融機関のデンタルローンに申し込みます。(当院でも、提携ローンのご紹介や、申し込み手続きのお手伝いが可能です)
- 審査:信販会社や金融機関が、患者様の収入や信用情報などに基づいて、ローンの利用が可能かどうか、また、いくらまで借りられるか(利用可能枠)の審査を行います。
- 契約:審査に通ると、患者様と金融機関との間で、借入金額、金利、返済回数、月々の返済額などを定めたローン契約を結びます。
- 治療費の支払い:契約が成立すると、金融機関から歯科医院へ、治療費が一括で支払われます(または、患者様ご自身が受け取った融資金で歯科医院に支払います)。
- 治療開始と返済開始:歯科医院での矯正治療がスタートすると同時に、患者様は、契約に基づいて、金融機関へ月々の返済を開始します。
このように、デンタルローンは、一時的に金融機関にお金を借りて治療費を支払い、その後、分割で少しずつ返済していく、という仕組みなのです。自動車ローンや教育ローンと同じようなもの、とイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
2. デンタルローンのメリット:高額な矯正治療も諦めずに始められる!

デンタルローンを利用する最大のメリットは、何と言っても「まとまった自己資金がなくても、高額な歯科治療(特に矯正治療やインプラント治療など)を、諦めずにすぐに始められる」という点です。
矯正治療は、多くの場合、数十万円から百万円を超える費用がかかります。これを一括で支払うのは、なかなか簡単なことではありません。「お金が貯まるまで待っていたら、治療を開始するタイミングを逃してしまうかもしれない…」「早く治療を始めたいけれど、今すぐには全額用意できない…」そんな方にとって、デンタルローンは非常に有効な手段となります。月々の返済額をご自身の収入に合わせて無理のない範囲で設定できるため、経済的な負担を平準化し、計画的に治療を進めることができます。
また、手元にある程度の貯蓄がある方でも、デンタルローンを利用することで、急な出費に備えて手持ちの現金を残しておくことができます。教育資金や住宅ローンなど、他のライフイベントへの備えをしながら、歯科治療も並行して進めることができるのは、大きな安心感に繋がるでしょう。さらに、デンタルローンによっては、医療費控除の対象となる治療費の全額を、ローン契約が成立した年の医療費として申告できるというメリットもあります(支払い方法によって異なる場合があるので確認が必要です)。これにより、税金の還付を受けられる可能性があり、実質的な負担を軽減できることも期待できます。このように、デンタルローンは、多くの方にとって、質の高い歯科医療へのアクセスを容易にする、重要な選択肢となり得るのです。
3. 注意点①【金利手数料】:分割払いで総額はいくら増えるのか?

デンタルローンのメリットは大きいですが、利用する上で絶対に理解しておかなければならないのが、「金利(分割手数料)」の存在です。デンタルローンは、お金を借りるサービスですので、借りた元金に加えて、利息を支払う必要があります。これは、自動車ローンや住宅ローンなど、他の全てのローンと同様です。
金利は、一般的に「年利〇%」という形で表示され、借入金額と返済回数(分割回数)によって、支払う利息の総額が変わってきます。返済回数が多くなればなるほど(=返済期間が長くなればなるほど)、月々の返済額は少なくなりますが、その分、支払う利息の総額は増えていきます。
例えば、100万円の矯正治療費を、年利5%のデンタルローンで支払う場合を考えてみましょう(あくまで概算です)。
- 24回払い(2年)の場合:月々の返済額は約43,900円、利息総額は約53,600円、支払総額は約105万3,600円
- 60回払い(5年)の場合:月々の返済額は約18,900円、利息総額は約134,000円、支払総額は約113万4,000円
このように、同じ100万円の治療でも、支払い回数を長くすると、総支払額が8万円近くも増えることが分かります。月々の負担が軽いからといって、安易に長期のローンを組んでしまうと、結果的に大きな金額を利息として支払うことになります。
デンタルローンを利用する際は、必ず「金利(年利)」「返済回数」「月々の返済額」「利息を含めた支払総額」を事前に正確に把握し、ご自身の返済能力と照らし合わせて、無理のない、かつ、できるだけ利息負担の少ない返済計画を立てることが非常に重要です。金融機関によっては、ウェブサイト上で返済シミュレーションができる場合も多いので、事前に試算してみることをお勧めします。
4. 注意点②【審査】:誰でも利用できるわけではない?

デンタルローンは、申し込みをすれば誰でも必ず利用できる、というわけではありません。金融機関は、貸し倒れのリスクを避けるために、申し込み者の返済能力を審査します。この「審査」に通らなければ、ローン契約を結ぶことはできません。
審査で主にチェックされるのは、以下のような項目です。
- 安定した収入があるか:正社員である必要はありませんが、アルバイトやパートであっても、継続して安定した収入があることが重要視されます。専業主婦の方や学生の方でも、配偶者や親権者の収入を基に申し込める場合があります。
- 現在の借入状況:他のローン(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)の借入額や件数が多い場合、返済能力が低いと判断され、審査に通りにくくなることがあります。
- 信用情報(クレジットヒストリー):過去にクレジットカードやローンの支払いを延滞したことがある、債務整理の経験がある、といった情報は、「信用情報機関」に記録されています。ここにネガティブな情報(いわゆるブラックリスト)が記録されている場合、審査に通るのは非常に困難になります。
- 勤続年数や居住年数:勤続年数が短い、あるいは賃貸住宅での居住年数が短い場合は、安定性が低いと見なされる可能性があります。
- 健康状態:一部のメディカルローンでは、健康状態に関する告知が必要な場合もあります。
審査の基準や厳しさは、金融機関によって異なります。もし一つの金融機関の審査に落ちてしまっても、別の金融機関であれば通る可能性もあります。ただし、短期間に複数のローンに申し込むと、「申し込みブラック」として信用情報に記録され、かえって審査に通りにくくなる場合があるので注意が必要です。審査結果が出るまでには、数日~1週間程度かかるのが一般的です。矯正治療の開始時期にも関わるため、スケジュールには余裕を持って申し込むようにしましょう。
5. 注意点③【契約内容】:契約前に必ず確認すべき重要ポイント

無事に審査に通り、いよいよ契約、という段階で、安心してすぐにサインをしてしまうのは禁物です。契約書の内容を細部までしっかりと確認し、疑問点は必ず解消してから契約を結ぶようにしましょう。特に確認すべき重要なポイントは以下の通りです。
- 金利(実質年率):広告などで表示されている金利だけでなく、手数料などを含めた「実質年率」が何%なのかを正確に把握しましょう。金利のタイプ(固定金利か変動金利か)も確認が必要です。
- 返済回数と月々の返済額:ご自身の収入と支出のバランスを考え、無理なく返済を続けられる回数と金額になっているか、再度確認しましょう。ボーナス払いの併用が可能かなども確認ポイントです。
- 支払総額:元金と利息を合わせた、最終的な総支払額がいくらになるのかを必ず確認し、納得した上で契約しましょう。
- 返済方法:口座からの自動引き落としが一般的ですが、引き落とし日や、残高不足の場合の対応なども確認しておくと安心です。
- 繰り上げ返済の可否と手数料:もし将来、まとまったお金ができた場合に、予定より早く返済(繰り上げ返済)ができるかどうか、また、その際に手数料がかかるかどうかを確認しておきましょう。繰り上げ返済ができれば、利息の負担を軽減できます。
- 遅延損害金:万が一、返済が遅れてしまった場合に、どのくらいの遅延損害金が発生するのかも確認しておきましょう。
- 中途解約や治療中断時の扱い:矯正治療は長期間にわたるため、万が一、転勤やその他の理由で治療を中断せざるを得なくなった場合に、ローン契約がどうなるのか、治療費の清算はどのように行われるのか、といった点も、事前に確認しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
契約書は、法的な拘束力を持つ重要な書類です。少しでも分からないこと、不安なことがあれば、遠慮なく金融機関の担当者に質問し、全てクリアにしてからサインするようにしてください。
6. 他の分割払い方法との違いは?(クレジットカード・院内分割)

デンタルローン以外にも、矯正治療費を分割で支払う方法として、「クレジットカードの分割払い」や、歯科医院によっては「院内分割」という選択肢があります。それぞれの特徴と、デンタルローンとの違いを比較してみましょう。
- クレジットカードの分割払い・リボ払い
- メリット:普段使っているクレジットカードで、比較的簡単に分割払いが利用できます。ポイントが付く場合もあります。
- デメリット:一般的に、デンタルローンよりも金利(手数料)が高くなる傾向があります(年利12%~18%程度が一般的)。また、カードの利用限度額によっては、高額な矯正費用全額をカバーできない場合があります。リボ払いは、月々の支払額が一定になる反面、返済期間が長期化し、利息負担が非常に大きくなる可能性があるので、特に注意が必要です。
- 審査:カード発行時に審査は完了していますが、分割払いの利用可能枠には制限があります。
- 院内分割(歯科医院独自の分割払い制度)
- メリット:最大のメリットは、多くの場合、金利や手数料がかからないことです。信販会社を通さないため、審査も比較的緩やかで、手続きも簡単な場合が多いです。
- デメリット:全ての歯科医院が対応しているわけではありません。対応している場合でも、分割できる回数が限られていたり(例:治療期間内での支払い完了が条件など)、利用できる治療費の上限が設けられていたりすることがあります。また、もし返済が滞った場合、歯科医院との関係が悪化してしまう可能性も考慮する必要があります。
- 審査:歯科医院独自の基準によりますが、一般的に信販会社のローンよりは厳しくありません。
- デンタルローン
- メリット:クレジットカードの分割払いより金利が低い場合が多く、高額な治療費にも対応可能です。返済回数も比較的長く設定できるため、月々の負担を抑えやすいです。
- デメリット:金利がかかること、信販会社の審査が必要であること、手続きに多少の手間がかかることが挙げられます。
どの支払い方法が最適かは、治療費の総額、ご自身の経済状況、金利への考え方などによって異なります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身に最も合った方法を選択することが大切です。
7. まとめ

矯正治療費の支払いに役立つ「デンタルローン」について、その仕組みと注意点をご理解いただけましたでしょうか。
- デンタルローンは、信販会社などから治療費を借り入れ、分割で返済する仕組み。
- まとまった資金がなくても治療を始められるのが最大のメリット。
- しかし、金利手数料がかかり、支払総額は一括払いより増える点に注意が必要。
- 利用には信販会社の審査があり、誰でも利用できるわけではない。
- 契約前には、金利、返済回数、総支払額、繰り上げ返済などの条件をしっかり確認すること。
- クレジットカード分割や院内分割と比較し、自分に合った方法を選ぶことが大切。
デンタルローンは、計画的に、そして内容をよく理解して利用すれば、あなたの「理想の歯並びを手に入れたい」という夢を叶えるための、非常に心強い味方となります。しかし、安易な利用は、将来の負担増に繋がるリスクも伴います。「月々の返済額が少ないから」という理由だけで決めるのではなく、必ず「総支払額」を意識し、無理のない返済計画を立ててください。
当院では、各種デンタルローンのご紹介や、手続きのお手伝いも行っております。費用に関するご不安や、支払い方法に関するご相談も、カウンセリングの際に、どうぞ遠慮なくお話しください。あなたにとって最適な方法を、一緒に考えていきましょう。
以上、東京都葛飾区の歯医者 新小岩いろは歯科・矯正歯科、院長の細谷 亜沙美でした。