【転勤族必見】矯正中の引越し、転院しやすいのはワイヤー?インビザライン?
こんにちは。東京都葛飾区の歯医者 新小岩いろは歯科・矯正歯科、院長の細谷 亜沙美です。お仕事の都合で、数年ごとに生活の拠点を移される方は少なくありません。矯正治療は年単位の時間がかかるため、「治療を始めたいけれど、また転勤になったらどうしよう…」という不安から、一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。先日、まさにそのような状況にある方から、非常に的を射たご質問をいただきました。
「2~3年後に再び転勤の可能性があります。矯正治療を途中で引っ越すことになった場合、転院しやすいのはワイヤー矯正とインビザライン、どちらでしょうか?インビザラインはデータ共有がスムーズそうだし、ワイヤーは治療費の一部返還があると聞き、メリット・デメリットがあって決められません。」
素晴らしい着眼点です。転勤の可能性がある方が矯正治療を始めるにあたり、この「転院のしやすさ」は、治療方法を選択する上で極めて重要な判断基準となります。ご認識の通り、ワイヤー矯正とインビザラインには、それぞれ転院に関するメリットとデメリットが存在します。今回は、その両者を多角的に比較し、あなたが後悔のない選択をするためのお手伝いをさせていただきます。
目次
1.【結論】転院の「手続きのスムーズさ」ならインビザラインが有利

まず、ご質問の核心である「転院のしやすさ」を、「治療計画の引き継ぎのスムーズさ」という一点に絞って比較した場合、インビザラインに軍配が上がります。
インビザライン治療は、「クリンチェック」と呼ばれる3Dシミュレーションソフトを用いて、治療開始から完了までの全ての歯の動きをデジタルデータで計画します。このデータは、アライン・テクノロジー社のサーバー上で世界的に管理されています。そのため、あなたが日本国内のどこに引っ越しても、あるいは海外に転勤になったとしても、転院先のインビザライン認定ドクターは、あなたのクリンチェックデータにアクセスし、これまでの治療経過と今後の計画を正確に把握することができます。
これにより、治療方針のブレが少なく、非常にスムーズな引き継ぎが可能になります。例えるなら、世界共通のカルテを持って転院するようなものです。この「データ共有の容易さ」が、インビザラインが転院に強いと言われる最大の理由です。
2.【費用の視点】ワイヤー矯正の「治療費返還」という大きなメリット

一方、費用面では、ご指摘の通りワイヤー矯正に大きなメリットがあります。 多くの矯正歯科医院が加盟している「日本臨床矯正歯科医会」や「日本矯正歯科学会」では、転院する患者様のために、治療費の清算に関するガイドラインを設けています。
これは、治療の進行状況に応じて、支払った治療費の一部を返金するというものです。例えば、治療の初期段階であれば60~70%、中盤であれば30~50%といったように、ある程度の目安が示されています。もちろん、これはあくまで目安であり、医院の規定によって異なりますが、少なくとも治療が進んでいない分に関しては、ある程度の返金が期待できるため、転院先での費用の足しにすることができます。
対して、インビザラインの場合、治療開始時に、治療完了までの全てのマウスピースの作製費用を一括でメーカーに支払うシステムが一般的です。そのため、たとえ治療の初期段階で転院することになっても、原則としてマウスピース作製費用の返金はありません。 転院先では、改めて診断料や治療費が必要になるため、結果的に費用が二重にかかってしまうリスクがあります。この点が、インビザラインでの転院における最大のデメリットと言えるでしょう。
3. 転院先探しはどちらが大変?それぞれの「受け入れ医院」事情

手続きや費用の問題だけでなく、「そもそも転院先が見つかるのか?」という点も重要です。
- ワイヤー矯正 ワイヤー矯正は、矯正治療の最も基本的な治療法であり、ほとんどの矯正歯科医院で対応が可能です。そのため、転院先の選択肢は非常に広いと言えます。ただし、ワイヤー矯正は、術者である歯科医師の技術や哲学が色濃く反映される治療でもあります。用いる装置の種類やワイヤーの曲げ方、治療の進め方などが、前の医院と転院先で大きく異なる場合、引き継ぎに際して治療方針のすり合わせが必要になったり、場合によっては装置を一度外して付け直したりすることもあります。
- インビザライン インビザラインは、インビザライン認定ドクターでなければ扱うことができません。しかし、現在では非常に普及しており、都市部であれば認定ドクターを見つけることはさほど難しくありません。ただし、医院によって経験値や年間の症例数(プロバイダーランク)に差があるため、ご自身の症例を安心して任せられる、経験豊富な医院を探す必要があります。また、医院の方針によっては、他院からの転院患者を積極的に受け入れていないケースも稀に存在します。
4.「抜歯・非抜歯」の判断が、転院の難易度に与える影響

あなたが同時に悩まれている「抜歯・非抜歯」の問題。実はこれも、転院の難易度に大きく関わってきます。
抜歯を伴う矯正治療は、非抜歯の治療に比べて、はるかに複雑で、歯科医師の診断力と技術が求められます。 抜歯によって生まれたスペースをどのように使って歯を動かし、最終的にどのような噛み合わせに導くかという治療計画は、まさに術者の腕の見せ所です。
そのため、抜歯症例の途中で転院する場合、転院先の歯科医師は、前の医師の治療計画を正確に理解し、それを引き継ぐか、あるいは修正するかの難しい判断を迫られます。特にワイヤー矯正の場合、前の医師の意図を100%汲み取ることが難しい場合もあり、引き継ぎを敬遠される可能性もゼロではありません。
インビザラインであれば、抜歯症例であってもクリンチェックのデータで計画が共有されているため、比較的スムーズではありますが、それでもやはり、非抜歯症例に比べれば引き継ぎの難易度は上がります。転勤の可能性が高いのであれば、もし可能であれば非抜歯で治療できる方法を選択する、というのも一つの考え方かもしれません。
5. 後悔しないために。転勤の可能性がある人が今、確認すべきこと

ここまで読まれて、ますます悩ましく感じられたかもしれません。しかし、ご安心ください。後悔しない選択をするために、治療を始める前の「今」、できることがあります。
それは、最初のカウンセリングの段階で、「2~3年後に転勤の可能性があるのですが…」と、正直に歯科医師に伝えることです。
そして、その上で、以下の点を確認しましょう。
- 転院時の治療費の返金規定について:その医院独自の、明確な返金ルールを確認します。(ワイヤー・インビザライン問わず)
- 転院に必要な資料の提供について:レントゲン写真や歯の模型、治療経過のサマリーなど、転院先への紹介状(診療情報提供書)をスムーズに作成してもらえるかを確認します。
- 先生の治療方針の共有:もしワイヤー矯正を選ぶなら、先生がどのような考えで治療を進めるのか、詳しく説明してもらいましょう。その医院が、他の医院とも連携しやすい、標準的な治療法を採用しているかどうかも、一つの判断材料になります。
正直に伝えることで、歯科医師も転勤の可能性を念頭に置いた上で、あなたにとって最適な治療法や、万が一の際の対応策を一緒に考えてくれるはずです。
まとめ
転勤の可能性がある中での矯正治療方法の選択。それぞれのメリット・デメリットを最後にまとめます。
- インビザライン
- メリット:治療計画のデータが世界共通で、引き継ぎが非常にスムーズ。
- デメリット:原則、治療費の返金がなく、費用が二重にかかるリスクがある。
- ワイヤー矯正
- メリット:治療の進行状況に応じた治療費の返金が期待できる。
- デメリット:術者による技術差が大きく、転院先との方針のすり合わせが必要になる場合がある。
どちらが良いと一概には言えませんが、「費用のリスクを最小限にしたい」と考えるならワイヤー矯正、「治療の継続性を最優先したい」と考えるならインビザライン、という見方ができるかもしれません。
最も大切なのは、あなたの状況を隠さずに歯科医師に相談し、信頼関係を築くことです。あなたの不安に真摯に向き合い、万が一の転院の際にも親身にサポートしてくれる、そんな歯科医院を見つけることが、矯正治療成功への一番の近道です。
以上、東京都葛飾区の歯医者 新小岩いろは歯科・矯正歯科、院長の細谷 亜沙美でした。
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